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糖尿病・代謝内科

目次

受診のきっかけは?

糖尿病かも!?で、初めて病院を受診されるのは2つのパターンが多いです。

パターン1:自覚症状なし

健康診断で、健診センターの保健師さんから至急病院に行って下さい、と言われたとき。
どうもHbA1cと血糖値という、良く分からない数字が高いらしい・・・。
自覚症状も特になく困ってもいないが、職場からも言われたので諦めて受診。

パターン2:自覚症状あり

喉の渇き、水分を多く飲む(特に炭酸系)、尿の回数が多い、体重が減ってきた、体の倦怠感、などの症状が出てきた。
インターネットで調べると、糖尿病の症状かもしれない、と心配になって、さしあたり糖尿病を診察している病院を受診するパターン。

糖尿病かもしれないので来ました、という患者さんの多くは上記のパターン1か2のことが多いです。
もちろん、自覚症状がないうちに健診で高血糖が発見されて受診して頂くことが望ましいですが、自覚症状が出てきた時は、より危険なサインですので、早く受診して頂くことが望ましいです。
仕事が忙しいので明日、明日・・・と延ばしていくと、ある日意識がなくなって救急車で運ばれているかもしれません。

糖尿病はじわりじわりと、気がつかないうちに、ほとんど症状がなく進行する病気なので、サイレントキラーとも呼ばれており、早期発見・早期治療がとても大事なのです。
ですから、そんな大げさな、病院なんて行かなくて大丈夫だよと思わず、ぜひ一度糖尿病専門医の病院の扉を叩いてみて下さい。

どんな病気なの?

簡潔に言ってしまうと「全身をめぐる血の中の血糖(グルコース)が高くて、体の様々な臓器に障害を与える病気」といえます。
原因は「血糖をさげるホルモン(インスリン)が体の中でうまく働いていない状態、もしくは不足している状態」にあります。

そもそもインスリンってどんなホルモンでしょう?

インスリンはすい臓という臓器から分泌されます。胃の裏側ぐらいにあります。
インスリンは栄養(糖)の運搬屋さんと考えて貰うと分かりやすいと思います。

上図のように、ご飯を食べると血液中の糖(グルコース)が上昇します。
そうすると、すい臓のβ細胞からインスリンが分泌されます。
そうすると、インスリンは肝臓や筋肉を中心に糖を運ぶ働きをします。
結果として、肝臓には栄養が蓄えられ、筋肉は太く、大きくなります。
すなわち、インスリンが作用することによって、血糖値は正常の値に戻り、体が成長することになります。

糖尿病はこのシステムに異常を来した場合、つまり「インスリンが体の中でうまく働いていない状態(インスリン抵抗性)、不足している状態(インスリン分泌不全)」になっているのです。

いつの間に糖尿病になるのだろう?

では、次に糖尿病についてです。
せっかくですので、読んで下さる皆さんに質問します。

  • インスリンを出してくれるすい臓(膵β細胞)は、どれくらいその機能が落ちると、糖尿病になるでしょうか?
  • いったいいつから、血糖値は実は高くなっていたでしょうか?

これを知ると、皆さん驚くことと思います。

実は、糖尿病と診断される10年以上前から、徐々に血糖値は上がり始めていてIGT(耐糖能異常)、そして食後高血糖となり、とうとう膵β細胞機能が半分の50%まで低下して、やっとやっと糖尿病になるのです。
「ある日突然血糖値が上がって糖尿病になりました!」ではなくて、自覚症状がないまま、じわりじわりと血糖値が上がっていって、とうとう半分以下になったとき、体の維持機構(恒常性=ホメオスタシスといいます)が破綻し、糖尿病となります。

もう少し、具体的に見てみましょう。これは、「メタボリックドミノ」と言われる図になります。
図の中心あたりに「糖尿病」があるのが分かると思います。

 

この図のように、糖尿病になるまでには、生活習慣・肥満・インスリン抵抗性・メタボリックシンドローム・インスリン分泌不全・・・など色々なドミノを倒してきているのです。
ただ、それまで気がつかなかっただけなのです。

糖尿病専門医のいる当クリニックの役割は、残った膵β細胞機能をできるだけ温存しながら、良好な血糖コントロールに誘導して、このドミノが倒れ続けることを止め、合併症発症をすること防ぐことなのです。

大事なことなので、もう1回書かせて頂きます。

糖尿病はある日突然発症するものではありません。
立ち止まっている病気ではなく、放置すれば進行する・悪化する病気なのです。
だからこそ、糖尿病が疑われたときは、早期に医療機関を受診することが重要です。

糖尿病の合併症って?

もう一度、先ほどのメタボリックドミノに登場してもらいます。

黄色枠の中の3つが小さい血管が障害されて起こる「細小血管障害」といいます。
「し・め・じ」で覚えると分かりやすいです。

水色枠の中の3つが大きい血管が障害されて起こる「大血管障害」といいます。

「え・の・き」で覚えると分かりやすいです。

合併症は、ある日堤防が決壊するまで気がつかなかったような状態に似ています。
徐々に上がっていく血糖値と合併症の進行に気がつかず、ある日突然、目が見えなくなって初めて糖尿病だったと分かったりすることもあります。
本当に「何時何分、テレビを見ていたときに、急に目が見えなくなった!」と言えるぐらい突然起こるときもあります。

血液は全身に回っています。
そのため合併症も全身に出現します。
そのため、眼科や循環器内科、脳神経内科の先生のお力をお借りして、皆さんの合併症を評価し、進行を防ぐよう治療しています。

実は、自宅でも血糖値が測定できます!

インスリン治療をされている方は保険診療内で、インスリン治療以外(内服薬)の方は自費診療となりますが、ご自宅でも簡易血糖測定器を用いて今のご自身の血糖を測定できます。

自己血糖測定(SMBG: Self Monitoring of Blood Glucose)機器は複数の会社から、画面がフルカラーだったり、声で結果を教えてくれたりとそれぞれ特徴があります。

指先に細い針を差し、手のひらより小さい機器で測定を行います。
だいたい10秒前後で血糖値を測定することができます。

しかし、時代はさらに進歩しました!
2週間センサーをつけたままで、好きなタイミングで血糖値を測定できます。
お風呂に入っても着けたままで大丈夫です。FGM(Flush Glocose Monitoring)と言います。
毎回針を刺さなくても、機器を近づけるだけで、血糖値(正確には血ではなく間質液の血糖値)直ぐに分かります。

当院でも取り入れており、ずっと継続している方もいらっしゃれば、季節毎に2週間だけやられる方、そして血糖が安定しないときに隠れた高血糖や低血糖がないかどうかを調べるために一時的に行われる方など、目的によって使用期間や頻度も変えております。
2つの機器の違いは、前者が測定したときの血糖値を「点」で教えてくれるのではなく(左図)、機器が15分ごと勝手に記録してくれており「線」で血糖値変化を知ることができます(右図)。
これによって、より適した薬を選択する一助になります。

ご関心のある方は、ぜひとも外来でお声がけ下さい。
院長が嬉々としてとして、熱く語らせて頂きます(笑)。

治療方法は何があるの?

食事療法・運動療法・薬物療法の3つを軸に治療を行っていきます。
特に、運動療法・食事療法は糖尿病治療において基礎であり、要になります。
それぞれについてご紹介します。

食事療法

食事療法は、最初のうちはとても大変に感じると思います。
生きることは食べることですから、それを制限することが治療なんて、どれだけ大変なんだろうと思われるでしょう。
そして、これまで好きに食べていたものが制限され、甘い物は絶対に禁止、となったら何を楽しみに、となると思います。
かくいう院長も甘い物は好きですし、自分でケーキを作ったりするぐらいです。

大切なのは、体、正確にはインスリンを産生する「すい臓にやさしい食べ物・飲み物かどうかを考える」ということです。
これは、私が駆け出しの頃、私に糖尿病臨床の基礎を2年間教えて下さったお師匠さんでもある、東北医科薬科大学 糖尿病代謝内科 前教授の赤井裕輝先生が教えて下さった考え方です。

すい臓は甘い物に弱いのです。それも直ぐに吸収される状態の食べ物・飲み物ですとなおさらです。
ですから、喉が渇いたときは、吸収の早いソフトドリンクではなく、砂糖の入っていないお茶や水が望ましいです。
それでもどうしても飲みたい、という方は、大量に摂取しなければ、人工甘味料を使用したソフトドリンクもよいかと思います(コカコーラゼロ®、アクエリアスゼロ®、三ツ矢サイダーゼロ®、カルピスゼロ®などなど意外と種類があることが分かります)
。このほかにも、チョコレートやアイスクリームもカロリーコントロールされたものがあります。
いつかご紹介したいと思います。

皆さんがよく手にする飲料水・缶コーヒーの砂糖の量を角砂糖何個分かを下に示します。
これはよく、病院の栄誉指導室などにも掲示されていたりします。

ぜひとも、何にどれくらい砂糖が多く含まれているか、パッケージの栄養表示を見て頂くとよろしいかと思います。
一般的に言われる、よく管理栄養士監修の食事、などは他のサイトでも取り上げられているので、そちらをご覧下さい。
皆さんにはそれらの知識の他に、ぜひとも「すい臓にやさしい食べ物・飲み物かどうかを考える」習慣をつけて頂ければと思います。

運動療法

運動療法には、「血糖値を下げる」「体重が減る」「血液の循環が改善する」「気持ちがリフレッシュする」など、数え切れないほどたくさんのメリットがありますが、糖尿病治療においての最大のメリットは「インスリンが効きやすい体になる」いうことです。

もう少し詳しく書きます。「インスリンが効きやすい=効果がでやすい」体というのは、「インスリンが体の中でうまく働いていない状態(インスリン抵抗性)」が改善されるということです。
特に肥満を伴った患者さんでは、血糖が高い状態は筋肉細胞や脂肪細胞に慢性的に炎症を引き起こし、インスリンの効きを低下させています。
そのため、運動をすると、その因子が減少するのです。
さらに即効性はありませんが、徐々に筋肉がついてくることによって、「エネルギー(糖)を消費してくれる量が増える」結果として血糖値が下がります。

皆さんもご存じの通り、運動には2種類あります。
そう、有酸素運動と無酸素運動です。どちらがよいのでしょうか?
多くの方が、エアロビクスなどの有酸素運動がよい!と考えられると思います。
答えは、ずるいかもしれませんが、有酸素・無酸素、どちらの運動もよい、が答えです。

運動を始める前に

さて、糖尿病治療のために運動を始めよう!と意気込んでるところに水を差すような形になりますが、始める前には、以下の時は、必ず主治医に運動をしてよいか、確認するようにしましょう。

  • 糖尿病の代謝コントロールが極端に悪いとき
    (空腹時血糖値250mg/dL以上または尿ケトン体が中等度以上陽性)
  • 眼の合併症(網膜症)が高度に進行しているとき
  • 腎臓の合併症(慢性腎不全)が高度に進行しているとき
  • 虚血性心疾患 (狭心症や心筋梗塞) や心肺機能に障害があるとき
  • 骨・関節の病気を持っているとき
  • 急性感染症 (インフルエンザなど)
  • 糖尿病で足が壊死しているとき
  • 高度の糖尿病自律神経障害(立ちくらみがひどいなど)

また、薬物療法中の方は、運動中・直後だけでなく、夜中に低血糖を起こす可能性もあるため、砂糖を持ち歩く(近くに置く)ようにしましょう。

有酸素運動

有酸素運動のメリット

有酸素運動は体脂肪をエネルギー源として使い燃焼させるため、内臓脂肪も同様に減少させることができます。
内臓脂肪量が減少することでアディポサイトカインの分泌も減少するため、高血糖、脂質異常、高血圧、動脈硬化の予防・改善につながります。

有酸素運動には、様々な生活習慣病の原因を予防・改善する効果があります。

運動きつさ(強度)

一般に中等度の強度の有酸素運動(最大酸素摂取量の50%前後、運動時心拍数が50歳未満で100~120拍/分、50歳以降で100拍/分以内)が推奨されます。
ただし、不整脈などで心拍数を指標にできない場合、自覚的運動強度として、「ややきつい」または「楽である」を目安とします。
今は、心拍数(脈拍数)も測定できる

運動の時間・頻度

できれば毎日、少なくとも週に3~5回、各20~60分間行い、1週間の合計150分以上の運動が推奨されています。
糖尿病患者さんの場合は、糖代謝の改善は運動後12~72時間持続することから、血糖値を低下改善させるため、運動はできれば毎日、少なくとも1週間のうち3~5日行う必要があります。
また、歩行運動の場合、1回につき、15~30分間、1日2回、1日の運動量として約10,000歩、消費エネルギーとして160~240kcal程度が適当であるとされています。

「有酸素運動は20-25分以上続けないと脂肪が燃えないから意味がない」と聞いたことがあるかもしれませんが、それは少々誤っています。
エネルギー源が脂肪なのか糖なのか、その割合が運動継続時間によって異なる、が正解です。

短時間だからといって、脂肪が全く減らないわけではありません。
ぜひ、まとまった時間がでなくても、細切れ時間を活用して運動してみてはいかがでしょうか。(具体的な身体活動のMETs表は、この運動療法の項の最後に掲載しておきます)

無酸素運度

無酸素運動のメリット

無酸素運動では筋肉をつけることができます。
筋肉量が増加すると、筋肉を維持するためにたくさんのエネルギー(糖)が必要になり、結果的に基礎代謝が向上します。
基礎代謝が上がれば何もしなくてもエネルギー消費が上昇し、太りにくくなります。筋肉細胞も脂肪細胞も生きていますから、エネルギーを消費します。
しかし、驚くことに筋肉1kgあたりのエネルギー消費量は1日約13kcalに対して、脂肪は1日約4kcalですから、3倍近く違うのです。
また、筋トレは成長ホルモンなど脂肪分解作用があるホルモンを分泌させる効果もあります。また、短時間で行えることも魅力です。

運動きつさ(強度)

8~10種目の無酸素運動を1種目につき、10~15回を1セットとして1~3セット繰り返すことが勧められています。
ただし、慣れていない場合には運動の種目・セット数など少ない回数から始めて、徐々に増やして実施することが望ましいです。
最初から負荷をかけすぎると逆に体を壊してしまいます。

運動の時間・頻度

週に2~3回の実施が勧められています。
ただし、虚血性心疾患(心筋梗塞・狭心症)などの合併症患者さんでは高強度の無酸素運動の実施はお勧めできません(主治医と要相談)。
また、高齢者においても急激な頻度や回数での実施はお勧めできません。

・・・運動療法は教科書的には以上のようになっています。

しかし、仕事をしている方がこんなに運動に時間をとれるでしょうか?
そして、やる気の出た数日できても1ヶ月、半年、1年と継続できるでしょうか?
なかなか、厳しいのではないでしょうか?出来ていたら苦労はしませんよね。
どこかで、明日から頑張る、になってしまいがちです。
まずは、その一歩目を踏み出すために、勇気をくれる海外の論文をご紹介いたします。

万歩計の名前が示すように、1日10,000歩は歩きましょう、というのがよく聞く話です。
もちろん、上のグラフで2,000歩~12,000歩までは歩数が増えるほど死亡者数は減っていますが、12,000歩で頭打ちになっています。
実は平均的な日本人の1日の歩数は約6,000歩と言われています。気がつかないうちに、それくらいは歩いているのです。
ですから、後もう少し意識して歩けば、目標に達することができそうです。

少ししか運動しないなら、あまり効果がないかも、と考えられるかもしれません。
しかし、それは正しいとは言えません。
実は青矢印が示すように、少し運動するだけで相当大きなメリットが得られるのです。
なお、運動量はMETs(メッツ)として目に見える形にしています。

上の図を見ると、想像以上にあんなに苦労するはずの運動(運動量)は、何気ない生活の活動の中で置き換えることができるのです。
エレベーターに乗ると立位1.3METsですが、代わりに階段をゆっくり上ると4.0METsで約3倍、速く上ると8.8METsで約7倍のエネルギーを消費することになります。
そして、当然のことながら、エレベーターを使用するより歩数も増えることになります。

有酸素運動の説明と少しかぶってしまいますが、日常生活・仕事中のちょっとした工夫で運動量は増やすことができますので、その第一歩をぜひ踏み出してみて下さい。

薬物療法

2022年9月現在、糖尿病の内服薬は、8系統あります。
さらに各系統それぞれに、複数の薬剤があります。
さらに注射製剤も、作用機序・作用時間・形状などによって本当にたくさん種類があります。
1つ1つ紹介していくと、それだけで本が数冊書けてしまいます。

糖尿病専門医は、こんなたくさんある薬の中から、一人一人の患者さんに合った薬を選ぶ、いわばインスリン治療薬のソムリエのような存在です。
それぞれの薬の特徴を活かし、患者さんの体の状態・合併症、年齢、食生活の様式などに合うようものを見つけ出し、処方しています。
そして、もしこの薬が合わない、となれば、それに替わる薬がないか、一生懸命探します。

糖尿病治療で生活が制限されてしまわぬようにするためにも、お気軽にご相談下さい。

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