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糖尿病:シックデー(病気の日)について

[2023.06.18]

天候が安定しない日が続いております。
また、日中は暑いぐらいなのに、朝晩はまだまだ上に1枚羽織るぐらい気温が下がっていたりします。
皆さん体調はいかがでしょうか?
当院でも、この寒暖差に加え、黄砂の影響もあってか風邪の患者さんが少し増えている気がします。

さて、体調が悪いとき、食事もあまりとれない時、糖尿病治療では何を気をつければよいでしょうか?
糖尿病におけるシックデイについて、今回は書いていこうと思います。


①シックデイとは?
②シックデイの注意点
③家庭での対応法
④こんな時は病院受診を!

 

①シックデイとは?

糖尿病の患者さんが他の病気にかかると、普段血糖コントロールが良好な方でも、血糖が大きく乱れやすくなり、高血糖や低血糖を引き起こし、そこから急性合併症が起こりやすくなります。このような状態をシックデイ(sick day  sick = 病気、day = 日:病気の日とよび、普段の治療とは違う、特別な注意が必要となります。

 








風邪・嘔吐・発熱・下痢・食欲不振このあたりは身近にあるシックデーの原因となります。しかし、このほかにも、怪我や骨折、手術、ステロイド投与、癌などでも起こりやすくなっています。

②シックデイの注意点
先ほど書きましたように、シックデイでは、高血糖にも低血糖にもなりうると書きました。例えば、嘔吐していたり、風邪で食べられなければ、高血糖いならないのでは?、と思われた方もいるかもしれません。折角ですので、どんな時に起こりやすいか、具体例を列挙したいと思います。

<高血糖になるやすい状態>

病気や風邪などで体に身体的・精神的ストレスがかかると、体を守るためにステレス対応ホルモン(コルチゾール、カテコールアミンなど)が分泌されます。これらのホルモンは、血糖を下げてくれるインスリンの作用を効きにくくしてしまいます。また、リウマチなどの膠原病でステロイドを内服されているとこれはコルチゾールの仲間ですので、同様の状態となります。こうなると、高血糖を起こしやすい状態になってしまいます。また、ここに脱水が加わると、一気に血糖値は上昇し続けます。

<低血糖になりやすい状態>
嘔吐・下痢などで、十分に食事を摂れないときに、いつもと変わらずインスリン注射を打ったり、内服薬を飲んでしまうと、低血糖を起こしやすい状態になってしまいます。

③家庭での対応法

 ◎当院の糖尿病治療の患者さんの場合は、糖尿病手帳の最初に時間外連絡先が記載されていますので、ご心配な時が遠慮せずにご連絡下さい◎

1)糖尿病のかかりつけ医の事前の相談が無い場合は、治療を継続してください
元気な時は食事が摂れないときは、経口薬やインスリン(食事の度に注射する、追加インスリン)はスキップされている方が多いかと思います。しかしシックデイの時は、それでなくても高血糖になっている可能性があります。自己判断では中止しないで下さい。

中止薬(内服薬・インスリン)は一般的な指標はあるのですが、個々人によって大きく異なりますので、予めご相談頂いた方が安心です。同じ糖尿病治療薬でも、中止した方がよいものと、中止が必要ないものがありますので、外来受診時などに、ぜひ質問して頂ければと存じます。

特に、1型糖尿病の場合、1日1回ないし、2回打っている持効型インスリン(トレシーバ、レベミル、グラルギン、ランタス、ランタスBS、NPHインスリン)を中止してしまうことは、その後に重大な高血糖昏睡(糖尿病性ケトアシドーシス)を引き起こし、生命の危機に至る可能性もあります。自己判断では絶対に中止しないで下さい。

2)シックデイでは、1日4回(3食前+眠前)血糖をできるだけ測定して下さい

元気な時の血糖値 200 mg/dL と、シックデイの時はの血糖値 200 mg/dL は全く意味合いが違ってきます。この後急激に悪化する場合があるからです。昼食前がその程度であったのに、眠前には血糖値 500 mg/dL まで上がってしまったり、お持ちの自己血糖測定器で「Hi」=「血糖値 600 mg/dL 以上」となっていることもよくあります。食べられないから、ポカリスェット、OS-1、ウィダインゼリーなどでどうにか食事を摂ろうとされることもあるかと思います。しかし、これらの商品には糖質が多量に含まれていますので、安易に摂ることは非常に危険です。

3)水分を多めに摂取して下さい

脱水が進行すると、さらにインスリンが効かなくなってきますので、もっと血糖値が上昇し、高血糖昏睡(高血糖高浸透圧症候群)を引き起こし、生命の危機に至る可能性もあります。
コンソメスープ、野菜スープ、麦茶などがお薦めです。なるべく1時間に 200mL程度は摂るようにして下さい。

下痢・嘔吐で水分が喪失するのは直感的に分かりやすいと思うのですが、発熱も汗からどんどん水分が喪失します。発熱がある場合は、体温が1℃上昇するごとに15%程度増加します。Aさんの平熱を36.3℃として、38.3℃だった場合、発熱による汗が増加します。計算式は1125mL×15%×(38.3℃-36.3℃)=337.5mL/日となり、Aさんは不感蒸泄量として、1125mL+337.5mL=1462.5mLの水分を失います。(成人では、平熱でも15mL/kg/日の水分が汗として喪失しており、1日あたり1125mL、おおよそ1リットル近く体からなくなっているのです)

4)消化のよいものを摂取して下さい

体調が悪いときは、普段より当然食べられないと思いますが、胃腸に優しく、吸収のよいものがお薦めです。具体的には、おかゆ、うどんなどがあげられます。

④こんな時は病院受診を!

■嘔吐・下痢などの症状が強く2日以上続くとき
■39℃以上の時
■24時間、食事・水分が摂れないとき
■血糖値 350 mg/dL が1日以上続くとき
■低血糖が頻回に起こるとき
■意識状態が悪い時(呼びかけに答えない、つじつまの合わないことを言うようになる)

 

 

 

 

 

◎判断に迷ってた時は、まずはかかりつけクリニックか病院に連絡して下さい。
◎あと1日、あと1日でよくなるはず・・・と受診を延ばすと、取り返しのつかない状態まで進行することがあります。

 

 

名取とおる内科・糖尿病クリニック
院長 鈴木 亨

 

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