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健診結果の読み方:コレステロール・中性脂肪

[2023.01.22]

 

 












「コレステロール(HDLコレステロール・LDLコレステロール)」と「中性脂肪」

脂質異常症診療において欠かすことの出来ない検査項目です。
前回のHbA1c、血糖値と同様に健診でも必ずといっていいほど登場します。
今回は、この2つについて解説したいと思います。


① コレステロール・中性脂肪とは?
② 脂質異常症(高脂血症)との関連
③ 特に注意すべき脂質異常症

① コレステロール・中性脂肪とは?

採血によって、血中のコレステロール・中性脂肪を測定します。

コレステロール(HDLコレステロール、LDLコレステロール)と中性脂肪(トリグリセライド)を測定することが多いです。
当院では、結果が悪かったからといって直ぐに薬を開始することなく、まずは詳細な病態を把握するため、すなわちより動脈硬化症を引き起こしやすいかどうかをより精密に検査するために、HPLC法によるアガロースゲル電気泳動でリポ蛋白分画や、アポ蛋白の値を測定します。・・・ですが、健診ではそこまでは不要ですので、見かけることはないかと思います。

「脂!体に悪いもの!」という印象があるかもしれませんが、それは一部誤解があります。もちろん過剰であれば問題となりますが、本来は人間が生きていく上で大切な成分の1つです。

コレステロールは、からだを構成する細胞の膜の構成成分やホルモンの原料になるなど、体内で重要な役割を担っている脂質です。一方、中性脂肪は生きるために必要なエネルギー源となる脂質で、皮下組織や内臓の周りの脂肪組織に蓄えられています。
すなわち、全身をコントロールするホルモンを生成したり、寒さから体を守ったり、栄養が不足しているときの貯蔵庫として大事な役割を担っているのです。もちろん、繰り返しになりますが、過剰になれば、動脈硬化症や肥満症・・・結果として心筋梗塞、脳梗塞、2型糖尿病などを発症する原因にもなります。


② 脂質異常症(高脂血症)との関連

(動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版より引用)

LDLコレステロール(LDL-c)
一般的には「悪玉コレステロール」と呼ばれています。
LDLは肝臓にある脂質を全身に運ぶ役割をするリポ蛋白です。
LDLに存在するコレステロールが過剰だと、血管壁の中に入り込んで動脈硬化を引き起こす原因になるため、「LDLコレステロールが高い=悪い」とされています。

■HDLコレステロール(HDL-c)
一般的に「善玉コレステロール」と呼ばれています。
HDLは血液中の余分なコレステロールを回収して肝臓へと運ぶ役割をするリポ蛋白です。
スカベンジャー経路といい、悪い物(LDLコレステロールなど)を掃除機のように吸い上げて、肝臓に戻してくれます。
HDLコレステロールが高いということは、悪玉コレステロールの回収処理が良好であり、動脈硬化のリスクが低いことを意味しまするため、「HDLコレステロールが高い=良い」とされています。


                                        (引用元:https://sd-ldl.com/index.html)

■中性脂肪(TG)
脂(揚げ物など)食べ過ぎやお酒の飲みすぎなどによって高くなります。
高中性脂肪が動脈硬化を起こすかどうかは諸説あり一定の見解はありませんが、おなかに脂肪がつく(=特に内臓脂肪がつく)メタボリックシンドロームでは、インスリンが効きにくくなり(インスリン抵抗性が増加する)、糖尿病を発症するリスクとなりますまた、中性脂肪が極端に高い場合、急性膵炎を発症するおそれがあるので注意が必要です。

■non-HDLコレステロール
総コレステロールからHDLコレステロールを差し引いた値です。
動脈硬化を引き起こすコレステロールはLDLコレステロール以外にもわずかに存在しており、Non-HDLコレステロールは動脈硬化の原因となるすべての悪玉コレステロールの量を指します
動脈硬化のリスクを総合的に管理できる指標として、現在は脂質異常症の診断基準の1つとなっています。
(直感的には下の絵の方が分かりやすいかと思います)

                                       (引用元:https://mainichigahakken.net/ )


*応用編* 
■小型LDLコレステロール(sd LDL)

「超悪玉コレステロール」とよばれています。実は、上記のLDLコレステロールの中にも、小型~大型の物まであります。
その中で、小型LDLコレステロールはより動脈硬化を引き起こしやすいということが分かっています。
現時点では、保険診療では測定することができず、自費診療になっています。

                                        (引用元:https://sd-ldl.com/index.html)

結果は、翌月の診察時に専用の説明用紙に印刷してお渡ししております
当院では、すでにのべ150件以上の測定を行っており、その結果を動脈硬化専門医である院長が詳細に説明させて頂いております。
また、複数回計測することにより、ご自身で治療効果を実感してもらっております。
もし測定希望の方がいらっしゃいましたら、お気軽にお声がけ下さい。
なお、測定しますと以下の様なレポートも併せてお渡しさせて頂きます。

 

③ 特に注意すべき脂質異常症

脂質異常症は生活習慣によって引き起こされるものが多いですが、遺伝するものもあります。
どの遺伝性脂質異常症(原発性脂質異常症)も重要なのですが、ぜひとも皆さんに知って頂きたい病気があります。
それが、「家族性高コレステロール血症」という病気です。

■家族性高コレステロール血症

日本人の約300人に 1 人はいると考えられています。
また、冠動脈疾患患者(心筋梗塞・狭心症)においては30人に 1 人程度、早発性冠動脈疾患や重症高 LDL-C 血症(メタ解析では190 mg/dL 以上と定義)においては15人に 1 人程度と考えられています。

診断基準
① 高LDLコレステロール血症(未治療の場合は LDLコレステロール 180 mg/dL以上)
② 腱黄色腫(手背、肘、膝等またはアキレス腱肥厚)あるいは皮膚結節性黄色腫
③ 本疾患の家族歴、または早発性冠動脈疾患の家族歴(第一度近親者で男性55歳以下、女性45歳以下)

この疾患の何が問題かといいますと、例えば生活習慣が不良で50歳頃に高LDLコレステロール血症と健診で指摘されて治療を開始したとします。しかしこの方は、生まれながら高いわけではありません。おそらく壮年期に入った頃から徐々に高くなっていったのだと思われます。
しかし、家族性高コレステロール血症のかたは、生まれた時からずっと高値なのです。そのため、健常者と比較して、心筋梗塞・狭心症は約10-20倍、末梢動脈疾患は5-10倍起こしやすいと言われております。遺伝子が2本とも異常のホモ型の場合、20-30歳で急逝心筋梗塞を発症して亡くなる方もいらっしゃいます。1本だけのヘテロ型の場合でも、40-50歳前後と明らかに若くして発症します。

もし、健診を受けてLDLコレステロールが180 mg/dL以上(最近 160程度でも怪しいと言われています)、ご両親が若くして心筋梗塞・狭心症を起こしているなどありましたら、ぜひとも1度病院を受診されることを“強く”お薦めします。

日本動脈硬化学会でも本疾患を特集しておりますので、ぜひともご覧下さい。

それでは次は【健診結果の読み方:尿酸値】を特集したいと思います。
ビール、プリン体、蒸留酒・・・など日頃から気をつかわれている方など、多い身近な検査項目かと思います。

 


名取とおる内科・糖尿病クリニック
院長 鈴木 亨

 

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