メニュー

健診結果の読み方:尿酸値

[2023.02.16]














「尿酸」
は痛風という言葉で、何となく聞いたことがある、という方が多いかと思います。また、どうもプリン体ゼロのビールが発売の方が尿酸値が上がらないらしい・・・とコマーシャルをやっていたりと、など、意外と身近な検査項目かと思います。
今回は、そんな「尿酸」について解説したいと思います。


① 尿酸とは?
② 痛風発作とは?
③ 高尿酸血症の治療法は?



① 尿酸とは?

採血によって、血中の尿酸値を測定します。
尿酸は「プリン体」という物質が体内で分解されてできる、いわゆる老廃物です。
「プリン体」は運動したり臓器を動かしたりするためのエネルギー物質で,常に体内で作られています。また,私たちの細胞には遺伝情報を伝える役割を持つ核酸という物質がありますが。遺伝情報であるDNAは核酸の集合体(組み合わせ)で出来ております。DNAは正式名称が「デオキシリボ核酸」といいます。ここでピン!と気がつかれ方もいるでしょう。「デオキシリボ核酸」です。核酸の構成成分もプリン体ですので古くなった細胞を分解する新陳代謝の過程でこの核酸からプリン体が出てきます。
すなわち、プリン体(尿酸)の産生は、人間が生きていく上で必須の現象なのです。
生きていく限り、必ず尿酸が作られることになります。

また、プリン体は細胞の中にあるものですから,動物・植物いずれの食品からも体内に入ります。これらのプリン体は主に肝臓で分解され尿酸となり,一時的に体内に溜め込まれた後,尿や便として排泄されます。ですから、「プリン体ゼロ」の商品が、このように宣伝されるわけですね。

そして、肝臓で「プリン体」は「尿酸」に分解され、腎臓を経由して尿中に排泄されます。



② 痛風発作とは?
  



 

 

 

 

 

 

痛風という名前の由来の通り、「風にあたったくらいでも痛い」ことがその名前の由来になっているくらい関節が痛む圧倒的に男性に多い疾患です。発症部位としては、「親指の付け根」が一番有名ですが、その他にも、「足の甲」「アキレス腱」「足首」「膝」などに尿酸が蓄積し、炎症を起こします。
患者さんにお話を聞くと、痛くて寝ていられず、救急車を呼ぶぐらいひどかった、と言われる方もいらっしゃいます。また、発作の起こる前兆の時期だと、何となくムズムズする、チクチクする感じがする、という理由で来院される方もいらっしゃいます。
発作が起きているときは、ステロイドと抗炎症薬を数日間内服して頂きます。
また、前兆の時期は、未然に発作を防ぐため、コルヒチン、とう薬剤を使用します。
そしてその後は、そもそもの原因である「高尿酸血症」の治療にうつります。

よくある痛風発作の起こるストーリーをご紹介します。
① 日中にスポーツを楽しみ、たくさん汗をかく。
② 夜に打ち上げで、ビールで乾杯、他にもお酒を飲む。
③ 帰宅後、入浴してそのまま就寝。
・・・そして、真夜中に痛風発作発症。本当によくあるケースです。

汗をかいて、脱水になります。ビールを飲んでプリン体を摂取し、更にアルコールは利尿効果があるため更に脱水が進行します。そして、入浴して汗をかいて、更に更に脱水に。
こうなると、血中の尿酸値はみるみると上昇してしまい、夜中についに発症・・・となってしまいます。

運動をしたら日中からこまめに飲水すること、そして飲酒をしたり、入浴をした時は、寝る前にもしっかり水分補給して脱水を改善することが大切になります。


③ 高尿酸血症の治療法は?

尿酸値の治療は「7.8.9の法則」です。



 

(NHKホームページより引用)

尿酸値 7.0 mg/dL:「高尿酸血症」の診断となります。
 まずは、食事療法から開始となります。しかし、既に「関節炎(痛風発作)」「尿酸結節」があれば、薬物治療の対象となります。

尿酸値 8.0 mg/dL 「メタボリックシンドローム」「糖尿病」「高血圧症」「虚血性心疾患(心筋梗塞・狭心症)」「尿路結石」「腎障害」があれば、薬物療法の対象となります。

尿酸値 9.0 mg/dL直ぐに薬物療法の対象となります。

また、薬物療法が開始された場合は、 尿酸値 6.0 mg/dL以下を維持するように治療を行います。


では、薬物療法は具体的にはどのような選択の仕方をするでしょうか。



(NHKホームページより引用)

上記の様に同じ高尿酸血症でも、尿酸排泄低下型、腎負荷型、混合型とわけることが出来ます。
病態に合わせて、どのポイントを治療すれば良いか決まり、薬剤を選択することになります。
(病型分類は、採血と尿検査をすることにより決定します)

薬の選択ももちろん大切ですが、食生活もとても大切です。
①の絵でもありますように、プリン体の約20%は食事から摂取しているからです。

食事療法では以下の3つの点を特に注意して下さい。
(この他にもありますが、まずはこの3つを意識して下さい)

1)アルコール
2)果糖を多く含む清涼飲料水や果汁ジュース
3)プリン体を多く含む食品

1)アルコール
アルコールは体内で作られる尿酸の増加させるだけでなく、尿酸の排泄も抑制してしまいます。
「最近はビールを辞めて、ウイスキーに変えているんですよ。」という話を外来で聞くことも多いのですが、実は蒸留酒かどうかだけで無く、摂取するアルコールの量も問題になります。

「高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン 第3版」では、1日当たりのアルコール摂取量は、ビールなら500ml以下、日本酒では1合以下、ウイスキー60ml以下、焼酎(25%)100ml以下が尿酸値に影響を与えない量だと勧めています。プリン体オフのアルコール類を選択するのも1つの方法です。

2)果糖を多く含む清涼飲料水や果汁ジュース
果糖が多く入った清涼飲料水や果汁ジュースには要注意です。実は、この添加糖が体内で尿酸産生を促進します。
さらに、そもそも清涼飲料水などは2型糖尿病や肥満など、メタボリックシンドロームを引き起こす原因にもなるので、そもそも控えることが望ましいです。

3)プリン体を多く含む食品
プリン体の摂取量は 400mg/日以下が推奨されています。

 

外来では、もう少し詳しいパンフレットもお配りしておりますので、ご希望の方はお声がけ下さい。
「レバーの焼き串をビールを飲みながら食べて、さらにあん肝をつまみに日本酒・・・」は、文字を見るだけでお腹が空いてきそうで魅力的なメニューですが、プリン体をことを考えるとなかなかに。

また近年の研究で、プリン体にも質の違いがあることが分かってきました。
大豆はプリン体含量が少ない食品ですが、プリン体の中でもヒポキサンチンという尿酸を上昇させやすいものを多く含んでいます。尿酸値が高めの場合、納豆は身体に良いと毎日食べたりしていると、ますます尿酸値が上昇する場合がありますので要注意です。

具体的な治療薬剤は以下の通りです。




 

 

 

最後に、痛風(高尿酸血症)の経過を示して、終わりにします。

(NHKホームページより引用)

このように、高尿酸血症は痛風発作だけ気をつければ良い物で無く、慢性期には「痛風結節」と呼ばれる、耳に結節が出来たり、「痛風腎」とよばれる腎障害が起こり腎機能が低下します。また、高尿酸血症自体が、糖尿病や動脈硬化を進展させることが分かっています。

そのため、「健診で尿酸値が高いけど痛風発作もないし、大丈夫!」や「痛風発作は繰り返しているけど、そのたびに薬をのんで痛みを抑えているから大丈夫!」などとは考えず、ぜひとも治療するようにしましょう。

 

それでは次は【健診結果の読み方:腎機能障害(BUN/Cr)】を特集したいと思います。
少し専門的な内容になるかもしれません。なるべくかみ砕いて解説出来ればと思います。

 


名取とおる内科・糖尿病クリニック
院長 鈴木 亨

 

▲ ページのトップに戻る

Close

HOME