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健診結果の読み方:腎機能障害(BUN/Cr)

[2023.04.10]














一口に「腎機能障害」と言っても、あまりにも広範で収集がつかなくなってしまうので、少しポイントをしぼってお伝え出来ればと思います。


① BUNとは?Crとは?
② 異常が指摘されたら「まず」どうするか。
③ 腎機能障害の治療法は?


① BUNとは?Crとは?

BUNとは「尿素窒素」の略称です。なんだか、全くピンと来ませんよね。
「体内でエネルギーとして使われたたんぱく質が分解されるときにできる老廃物」で、大部分は尿中に排泄されます。腎の排出機能が低下すると血中のBUN濃度が高くなるため、腎疾患や尿路閉塞で高値を示します。
しかし、このような腎臓関係だけでなくても、水分摂取量が少なかったり、激しい運動をしたあとや、外傷、消化器出血、発熱などあれば値が少し高く出ます。ですから、BUNだけでは腎臓が悪くなっていると断定はできません。むしろ他の原因を探す手がかりになったりもします。

Crとは「クレアチニン」の略称です。ますます身近で無い言葉が出てきましてね。
筋肉が運動するための重要なエネルギー源であるクレアチンリン酸という物質、すなわち「筋肉が代謝されたあとにできる老廃物」がクレアチニンです。クレアチニンは腎臓でろ過されて尿として排出されるため、血中のクレアチニンの濃度が上昇していることは腎臓の機能が低下していることを意味します。ここまで読むと、あれ、BUNもCrも結局老廃物で同じじゃないか!となるかと思います。
しかし、CrはBUNよりもより正確に腎臓の機能低下を評価することができます。脱水や出血などの影響をほとんど受けません。

ただし、1つだけ落とし穴があります。そう、クレアチニンは筋肉の老廃物でした。

Crの検査は腎臓の機能を調べる上でポピュラーな検査ですが、数値は筋肉の量に左右されるため男女差が大きく、また腎臓の機能が1/2程度まで低下しないとなかなか高い値を示さないという欠点があります。人間の体はとても優秀で、本当にギリギリになるまで正常状態を保とうと頑張り、ある日限界を超えると驚くほど急なスピードで悪化するのです。













そのため、近年ではより精度の高い検査である推算糸球体濾過量(eGFR)の検査も行うことが多くなってきました。上のグラフでも、急ににCrが上昇していることが分かります。ですから、より正確な腎機能が求められるように研究が進んでいきました。

 

② 異常が指摘されたら「まず」どうするか。

1)病院を受診し、正確な腎機能を評価する。

2)悪化した原因を調べる。

3)適切な治療法へ。 → ③で詳しくご説明します。

 

1)病院を受診し、正確な腎機能を評価する。

先ほども少し出てきましたが、推定糸球体濾過量(eGFR : estimated  Glomerular Filtration Rate)というものを算出します。

Cr(クレアチニン)を用いたはeGFRは、下記の計算式で求めることができます(18歳以上の人が対象)。

男性 eGFR(mL/分/1.73㎡) = 194×Cr-1.094  × 年齢-0.287

女性 eGFR(mL/分/1.73㎡) = 194×Cr-1.094  × 年齢-0.287 × 0.739

暗算で計算できるような値ではありません、私も計算して届いた結果だけを確認しています。

腎機能が低下しても、血清クレアチニンが正常範囲内にとどまっていることがよくあります。

このような時は、eGFRを計算すると腎機能が下がっていることが判明します。eGFRが60以下で、腎機能低下と考えることができます。

 

 

 

 


 ご覧のように、若くて筋肉質でいかにも健康そうな男性のほうが、70歳の女性よりも腎機能が低い…なんてこともあります。

色々なサイトで自動で計算してくれます。ぜひとも自分の腎機能を計算してみて下さい。参考サイト

 

 

2)悪化した原因を調べる。

・採血 (腎機能を低下させる病気があるか調べます)

・尿検査(タンパク尿、血尿、尿沈査などを調べます)

・腎臓エコー (腎臓のサイズや位置、腫瘍を探したりします)

などで、原因を調べていきます。それによって、治療方法が大きく変わってくるからです。

特殊な薬剤を使用したり、ステロイドを使用したりするときもあります。

遺伝性のものも中にはあります。しかし、大半は日常生活の中に原因があります。

では、原因となり因子(リスクファクター)にはどのようなものがあるでしょうか?

・血圧 ・糖尿病 ・脂質異常症

・肥満 ・喫煙 ・多量の飲酒

・運動不足 ・ストレス

なんだか、どこかでみたことがあるようなものばかりですね。

そうなんです。腎機能障害の原因は、皆さんの身近なところにあるものが多いのです。

③ 腎機能障害の治療法は?

薬が効く疾患が薬物療法を行いますが、それ以外は、基本的に健康な腎臓に戻す根治療法はありません。
悪くなったら、基本的にそれっきりなことが多いのです。
つまり治療の要は、いかに悪化するスピードを遅くするかということにあります。

例えば、腎機能低下の危険因子である、血圧や糖尿病のコントロールをよくすることなどになります。

このように、腎機能低下が進行すると、腎代替療法(=血液透析)が必要になります。
当然、透析は腎臓を治しているのではなく、腎臓の代わりをしているだけにすぎません。

だからこそ、健診で腎機能異常(BUN、Cr) (eGFRもあればなお良し)が出たときは、無症状だからと言って放置するのではなく、必ずクリニックや病院を受診されるようにしてください。

これでまずは、【健診結果の読み方】シリーズは終了になります。

次からは、院長の専門である糖尿病・脂質異常症・肥満症などをもう少し掘り下げたブログが書ければと思います。

ぜひともお付き合いください。

 

 

名取とおる内科・糖尿病クリニック
院長 鈴木 亨

 

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