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健診結果の読み方:HbA1cと血糖値

[2023.01.01]

「HbA1c」と「血糖値」は糖尿病診療において欠かすことの出来ない検査項目です。
健診でも必ずといっていいほど登場します。
今回は、この2つについて解説したいと思います。


① HbA1c とは?
② HbA1c と血糖値の関係
③ 糖尿病との関係


①  HbA1cとは?
    HbA1c は「ヘモグロビン エー・ワン・シー」と読みます。ヘモグロビンは、血液の赤血球の中に存在し、体中に酸素を届ける働きをしています。そんなヘモグロビンが血液中の砂糖(グルコース)と結合した、糖化ヘモグロビンがHbA1cになります。

   

 赤血球の中にあるヘモグロビンと糖が結合している図になります。その糖化ヘモグロビンの割合を%で表記しています。
・血糖値が高い状態が続く→糖と結合するヘモグロビンが多くなる→HbA1cが高い
・血糖値が低い状態が続く→糖と結合するヘモグロビンが少なくなる→HbA1cが低い
・・・ということになります。

② HbA1cと血糖値の関係
 赤血球の寿命である120日ですので、HbA1cは測定日までの約45日前後(1-2ヶ月)の平均的な血糖値の程度が分かります。ですから、数日程度で数値が大きく変化することは基本的にありません。一方、血糖値は、その瞬間の血液中の糖(グルコース)の量を測定しています。そのため、食後は血糖値が上昇しますし、運動をすれば血糖値が低下します。時々刻々とその値は変化しているものです。
 「平均血糖値 (mg/dL) = 28.7 ✕ HbA1c(%) - 46.7」(Diabetes Care. 31(8): 1473-8, 2008) と報告している論文もありますが・・・実際に使うことはまずありません。

 HbA1cが上昇し糖尿病のコントロールが悪くなったとき「昨日甘い物をたべすぎてしまったんです」とか「昨日飲み会があったので食べ過ぎました」と、外来でお話をきくことがあります。繰り返しになりますが、1日だけ甘い物を食べたからといって、HbA1cが急に変動することはまずありません。

 
 受診日前日にうっかり甘い物を食べ過ぎてしまったから、ちょっと今日は受診をするのは辞めておくかな・・・、などと心配される必要はありません。
 ただし逆にHbA1cが高いということは、ここ数日ではなく、ここ1ヶ月近く砂糖を摂取する生活(習慣)がついてしまったことを意味します。例えば、暑くて毎日ソフトドリンクを1日何本も飲むようになった、とか、寒くなってきて毎日数個はのど飴をなめるようになったなど、なにか継続的に血糖値を上げる原因があることになります。けっこうな頻度で「体によいと思って始めた食品」が糖が多く使われていた・・・ということがあります。

 また、HbA1cが同じでも、平均血糖値が同じなだけで、実際の血糖値の変動は加味されておりませんので、いわゆる血糖変動に関しては、HbA1cからは全く分かりません。 
 同じHbA1c 7%でも、血糖値は 80 mg/dLかもしれませんし、250 mg/dLかもしれません。食事や運動など、測定タイミングで簡単に変わるものだと思ってください。 

 より端的に、直感的に分かりやすくしますと「HbA1c = その月の平均気温」「血糖値=その日の気温変化」と捉えて頂けるとよいかな、と思います。例えば、宮城県の4月の平均気温は10.3℃ですが、当然気温は時間によって変わりますし、日によっても変わります。

③ 糖尿病との関係
 まず、糖尿病の診断方法から説明したほうが分かりやすいかと思います。
 
 ここに「HbA1c」「血糖値」がバッチリでてきています(③の75gOGTT:75g糖負荷試験の説明は今回は割愛します)。そのため、健診では糖尿病の診断をするため測定項目に入っているのです。とはいえ、「早朝空腹時血糖値:126 mg/dL以上」とか「随時血糖値: 200 mg/dL以上」とか「HbA1c: 6.5%以上 」とあってもなんだかあまり馴染みがない数字だけにしっくりこないと思います。
 ・HbA1c + 30 = 体温
 ・血糖値 = 車のスピード
と、私は自分の外来では説明するようにしています。
 例えば、健診結果が「HbA1c 9.5%、空腹時血糖値 185 mg/dL」であったとしましょう。まだこの程度ですと、自覚症状がないかもしれません。しかし、健診センターから緊急の連絡がきて、しょうがないけど諦めて病院に行くか・・・という時、その結果をみた糖尿病専門医の私はどう考えているかというと・・・


という感じを想像して、健診結果をみながら診察を開始します。そして、痛くも痒くもないけれど、体の中ではこれだけ大変なことが起こっていていますよ、とお伝えします。
 なお、血糖値に全く異常がない方の「HbA1c 5.6% 未満」「空腹時血糖値 100 mg/dL未満」 です。体温 35.6℃・・・は少し低すぎるかもしれませんが、時速100 km未満の運転・・・は安全運転、大丈夫かな、となるかと思います。
 
 最後に「HbA1c」「空腹時血糖値」の正常型・正常高値・糖尿病型の図を掲載しておきます。ぜひ健診を受けた際には、ご自身のHbA1c・空腹時血糖値を確認し、参考にして下さい。



 それでは次は【健診結果の読み方:コレステロール値】を特集したいと思います。
 


名取とおる内科・糖尿病クリニック
院長 鈴木 亨

 

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