熱中症にはご注意を!
梅雨も明け、本格的に暑くなってきました。
太陽が昇る前から30℃を超え、太陽が沈んだあともなかなか気温が下がらず寝苦しい日々になりました。
当院でも、ほぼ毎日といっていいほど熱中症の患者さんが来院されます。
中には点滴が必要になるぐらい脱水が進行されている方もいらっしゃいます。
今回は、熱中症について書いていこうと思います。
①どうして熱中症はおこるの?
②熱中症の予防法
③熱中症の治療法(糖尿病患者が気をつけたいこと)
①どうして熱中症はおこるの?
そもそも熱中症はどのような原因でかかるのでしょうか?
それは、体温と調節システムが崩れたときに起こります。
人の体は暑い環境に置かれると、体温を適切に保つために汗をかきます。
汗が蒸発する時に、一緒に熱も持って行ってくれます(専門用語で気化熱といいます)。これによって体の熱を下がる・・・という仕組みになります。
すなわち、汗をかくおかげで、私達は体温調節を無意識に、上手く行っているのです。
しかし、この暑さから大量の汗をかき、体内の水分量が減って脱水になると、今度は体が汗をかきにくくとなります。そして、これが限界まで来ると、逆に汗が出なくなり、体の熱を放出できなくなってしまうことで、体のさまざまなところに支障をきたし、「熱中症」が発症します。
みなさんのイメージとして、熱中症は炎天下に水分をとらずに外で作業をしていたら気持ちが悪くなってきて・・・、と外で太陽を浴びていたせいでなると考えられるかもしれません。でも、実は家の中でも熱中症は十分に起こりえます。エアコンや扇風機など使用せずに、室温が高い状態であれば、熱中症を起こしても全く不思議ではありません。寝ている間に熱中症になっていた…なんてこともあります。
また、65歳以上で体温を適切に保ちにくいとされている高齢者の方や、逆に15歳未満で体温調節機能が十分でない若年者の方はより、起こしやすいと言われています。
そういえば、院長は中学生時代バレーボール部におりました。室内競技ですので、夏でも暗幕をかけて風が通らない体育館で練習をしていました。更に、途中で水分をとると根性がつかないので禁止されていました。今はおそらくどのようなスポーツでも水分補給が推奨されていると思いますが…。
②熱中症の予防法
実は、熱中症は気温だけでなく、湿度からも大きく影響を受けます。
また、普段でしたら問題のない気温でも、寝不足や体調不良などで「いつもだったら大丈夫だったのに」が通じないときもありますので、まずは無理をせず、しっかり体調管理をすることが大切です。
糖尿病や高血圧症の薬を内服されている方は、薬によっては排尿を促して治療する薬もありますので要注意です。
具体的な予防策としては、まずは室内をを適切な温度・湿度にすることです。
エアコンなどで室温を28℃以下、湿度を70%以下にすることが一つの目安になります。また、こまめな水分補給が大切になります。しかし、ここで、水分といっても何で補給するのかが重要になりますので、これは③の熱中症の治療法で詳しく書かせて頂きます。
また、真夏日などあらかじめ暑くなることが分かっている日は、極力外出を避けることも大切です。
③熱中症の治療法
熱中症には、軽度から重度まで3段階のレベルで症状が出ます。
<Ⅱ度の症状が出ている場合>
基本的にはⅠ度と、同様の応急処置をします。
上記の手当てをしても改善しなければ、すぐに医療機関で受診をおすすめいたします。
特に汗がでなくなってきたら、それはⅢ度に入りかけている危険なサインです。
<Ⅲ度の症状の場合>
各臓器の機能が低下し、命が危険に及ぶこともあります。救急車を呼ぶことが望ましいです。
<そのほか一般的なこと>
■服装■
熱中症を予防するためには、服装にも工夫が必要です。黒系の色の服や風通しが悪い素材の服は熱がこもって体温
の上昇を招く可能性があるため、白系がおすすめです。汗を吸収する素材、通気性が良く汗が早く乾く素材のもの
にし、帽子を忘れずに着用しましょう。また、日焼け防止でも使われる日傘も、直射日光を避けることができます
ので、おすすめいたします。
■水分■
こまめに水分を補給するために飲み物の持参は必須です。
1時間に250mlほどを2〜4回に分けて飲みます。
飲み物は水や麦茶で問題ありませんが、水分量に対して、0.2%ほどの塩分、糖分を摂取するようにします。
*糖尿病患者さんの場合*
色々なCMでスポーツドリンクなどが宣伝されており、熱中症予防を啓発しております。
ただ、スポーツドリンクには糖分が非常に多く含まれております。
多量に摂取しすぎると「ペットボトル症候群(ソフトドリンクケトーシス)」という、重症な病気を引き起こすことがあります。これは、ペットボトルの中の多量の糖分のため、高血糖となり、相対的にインスリン不足となり、結果としてケトンという毒が産生され、意識障害や致死的な状態に進行してしまいます。
また、仮に砂糖が含まれていなくても、紅茶、緑茶、コーヒーなどカフェインを含む飲み物、ビールなどアルコール類は利尿作用があり、脱水を進行させますので、中止してください。
塩タブレットも塩の補給とともに、かなり砂糖も含まれていますので要注意です。
私の外来では、カフェインが含まれておらず、ミネラルが入っている「麦茶」を、塩分は「梅干し」などでとることを推奨しております。
【参考文献】医学のあゆみ 274巻2号 熱中症に立ち向かう -予防と応急処置
名取とおる内科・糖尿病クリニック
院長 鈴木 亨