血糖測定機能付きのスマートウォッチにはご注意を
現在、amaz●nや楽●といったショッピングサイトで、血糖測定機能付きのスマートウォッチの広告をよく見かけるようになりました。
つい最近も、購入するかどうか迷っているのだけど正確なんですか?と、ご質問を受けることがありました。
昨今、酸素飽和度や睡眠時間など色々な機能が付いてより、自分の健康状態が一目で分かるように進化し続けるスマートウォッチの血糖測定器機能について、現時点での最新情報を書いていこうと思います。
■結論:皮膚を刺さないで血糖値測定ができる医療機器はない■
日本糖尿病学会から「血糖測定機能をうたうスマートウォッチ(腕時計型デバイス)について」というタイトルで声明を出しています。
皮膚へ針を刺さないで血糖測定ができるとうたうスマートウォッチやスマートリングの使用はしないように、アメリカ食品医薬品局(FDA)から警告がでており、2024年4月現在、指先穿刺や皮下センサー留置のための皮膚穿刺をすることなく、血糖値やグルコース値を測定できる医療機器はありません。
もう少し詳しくに書きたいと思います。
現在、血糖値を測定する方法はいくつかあります。
まずは、一般的に採血をする方法です。検診や病院・クリニックなどで腕などで経験があるかと思います。
実は血糖値の測定には特別な採血管が使われております。その為、非常に正確な結果がでます。
一方、主にインスリン注射をされている方(自費で購入される方もいらっしゃいます)は、簡易自己血糖測定器や持続型血糖測定器で、病院以外のところでも血糖値を測定することができます。簡易自己血糖測定器は、細い針で指先から血を出して血糖値を測定しますし、持続型血糖測定器は皮膚に1回刺し、間質液(転んだ時など傷口から透明な液が出てくると思います)の中の血糖値を測定しています。これらは全て医療機器で、実際の採血に比べると若干の誤差が生じますが、厳しい性能検査を受けた上で承認された商品になります。
針を刺さずに(非侵襲といいます)正確な血糖値をを測定することができること自体が2024年5月現在では承認されていないからです。
実際、最近こんなことが当クリニックの外来でもありました。
インスリン治療をされている患者さんで、血糖測定した記録手帳をみせて頂いたところ、いつも似た値で、かつ非常に良好なものでした。
しかし、どうも考えてもクリニックでの採血結果とかけ離れているものだったため、そのことをお伝えしたところ、最近刺すのが痛いため、スマートウォッチででてきた血糖値を記録している、ということでした。
正確に測定出来ているときもあるかも知れませんが、それが常に担保されていないと、とても怖いことになります。
例えば、検診で高血糖を指摘されているのに、スマートウォッチの方だと低い値がでているから・・・、と医療機関の受診が遅れてしまう可能性がでてきます。また、重症な高血糖や低血糖を見逃してしまう可能性もあります。その為にも、正確な値を測定できることが重要になってきます。
もちろん、今後さらに進化して測定出来ることになれば、これ以上望ましいことはありません。
将来そのような医療機器が発売されましたら、ぜひご紹介したいと思います。
名取とおる内科・糖尿病クリニック
院長 鈴木 亨